ここでは、キッチンの換気扇に油がどのようにしてこびりつくのかを明確に説明していきます。
1.換気扇に油が付着するプロセスの解説
換気扇に油が付着する主な原因は、調理中に発生する水蒸気が変化し、その結果として空気中に飛散する微細な油の粒子や蒸発した油蒸気が関与しています。
これらは上昇する気流や換気扇周辺の空気の動きによって換気扇へと引き寄せられ、最終的にその表面に付着します。
したがって、換気扇の油汚れは調理器具から直接跳ねた油が付着したわけではありません。この点を忘れずにおいてください。
それでは、このプロセスを順を追って説明していきます。
1.1 油の粒子が空中に散らばる過程
食材を油で調理する際、高温になることで食材に存在する水分が気体の水蒸気に変わります。
(例えば、炒め料理の場合も、フライパンの熱により食材の水分が水蒸気に転化するのです)
水が液体から気体へと変化する際には、体積がおよそ1700倍に膨張します。この水蒸気が外に逃れようとする際、油の膜を作り出し、この膜が破裂することで油が飛び散る現象が発生します。
油はねが発生する際、微細な油の粒子が空中に散布されます。
油はねによって飛散する油の粒子は、大きな粒であればコンロ周辺に落ちることが多いですが、非常に小さな粒子は落下速度が遅いため、しばらくの間空中に浮遊し続けます。
1.2 温かい空気による上昇気流で油が上昇するプロセス
加熱された空気が作り出す上昇気流を利用して、空気中の微細な油の粒子(液体)や蒸発した油(気体)が上昇する現象が起こります。
通常の温度では食用油はほとんど蒸発しないものの、温度が高まることで油も徐々に蒸発し気体に変わります。この蒸発した油は、温められた空気とともに上昇気流を形成し上昇していきます。
特に、揚げ物調理の際には調理器具内の油が熱されることで、その周囲の空気も加熱され、上昇気流が促進されます。
空気が加熱されると体積が増加し、その結果密度が低下して軽くなります。
この状態で、上部にあるより冷たい空気よりも軽いため、加熱された空気は上方へと移動する傾向があります。
加熱された空気が上方へと移動するこの現象を「上昇気流」と称します。この上昇気流は、空中に浮遊している小さな油の粒子(液体)や蒸発した油(気体)も一緒に押し上げ、上昇させます。
(しかし、上昇するにつれて周囲の冷たい空気によって冷やされるため、上昇速度は徐々に遅くなります。)
1.3 換気扇による油の粒や蒸発した油の吸引と付着
換気扇のプロペラの運動により、換気扇周辺で空気が吸引される流れが生成されます。この流れのため、近くまで上昇した小さな油の粒子(液体)や蒸発した油(気体)は換気扇に吸い込まれ、その結果として油汚れが形成されます。
換気扇が油の粒子や蒸発した油を吸い込むと、これらが換気扇のプロペラや内部に付着します。
(壁に油が付くのは、直接の油はねか、周辺に散布された油の粒子や蒸発した油が原因です)。
油が換気扇に付着すると、酸化(酸素との反応)を起こし、さらに空気中のホコリがこの油に付着することで、黒くて粘り気のある油汚れが形成されます。
これで「換気扇に油汚れが付く仕組みの解説」を終えます。
2.総括
これまでの説明を簡潔にまとめると、
・換気扇に油汚れが発生するのは、「加熱された水分が水蒸気となり、その過程で微細な油の粒子(液体)や蒸発した油(気体)が空中に散布され、これらが上昇気流や換気扇周辺の空気の流れにより換気扇に引き込まれて付着するため」です。
・換気扇のプロペラや他の部分に付着した油が酸化すると、さらに空気中のホコリがその油に付着して、黒く粘り気のある油汚れを形成します。