この記事では、高温の油に水を加えた時に油が飛び散る現象や火勢が増すメカニズムを分かりやすく説明しています。
1.水を加えると油が飛び散る理由
水を高温の油に加えると、飛び散る現象は、水が高温油中で瞬時に沸騰し、水蒸気に変わることによるものです。水蒸気は液体状態の水よりも体積が約1700倍に膨張します。
通常、水は100℃で沸点に達し蒸発し始めますが、食用油の沸点は種類によって異なりますが、大体200℃以上です。つまり、油は水よりもはるかに高い温度で液体状態を保持します。
(揚げ物に使われる油の温度は通常170℃~180℃ですが、この解説では「高温の油=170℃~180℃以上」としています)
高温の油に水を加えると、水の密度が油よりも重いため、水は調理器具の底に沈みます。
その結果、油と接触する水が瞬時に加熱され、水蒸気に変化します。
この過程で、水から水蒸気への変化に伴い急激な体積の膨張が生じ、それによって上層の油が下から押し上げられ、飛び散る現象が発生するわけです。
油が発火する際、水を加えると火勢が増す理由
油が自己発火する温度に達している状態で水を加えると、火の勢いが強まるのは、油が空中に飛び散り、そこに酸素が供給されて燃焼が促進されるためです。
例えば、天ぷら油は200℃で白煙が出始め、360℃で自己発火の温度に到達します。この温度で油は周囲に火がなくても自発的に燃え始めることがあります。一方、天ぷら油の一般的な引火点は250℃以上です。
火が近づいていなくても、油が360℃以上になると自己発火する可能性がありますが、油全体が発火するわけではなく、空気に触れている部分のみが燃えます。
発火している油に水を加えると、水が沸騰し水蒸気に変化して急激に膨張します。この膨張した水蒸気が油を押し上げ、空中に飛ばします。
その結果、通常は酸素と接触しない油が、空中に飛び散ることで酸素と触れ合い、さらに広範囲での発火や引火が起こり、火の勢いが強くなります。
2.油火災の対処方法
油から火が出た際の対処方法は主に次の2つです。
・消火器または消火スプレーを使用して消火する
・湿らせたしぼったタオルやシーツを調理器具にかぶせる
これらの方法について、詳しい手順を以下で説明します。
消火器や消火スプレーを使った消火方法
油火災の際、消火器や消火スプレーを使用する方法は非常に効果的で安全です。
まずは火源のコンロのスイッチを切り、安全ピンを抜いた消火器のノズルを燃えている油に向け、レバーを押して消火剤を噴射します。
消火剤の多くは粉末形式であり、消防法によって定められたピンク色で着色されていることが一般的です。
消火時には、ノズルから噴射された消火剤が空気中の酸素と接触して燃えている油を覆い、消火剤が熱により溶けて酸素の供給を遮断し消火します。
重要なのは、消火剤を一箇所に集中して噴射するのではなく、燃えている油の表面を均一に覆うように広範囲に噴射することです。
濡れたタオルやシーツを使った消火法
消火器や消火スプレーが手元にない場合、水で湿らせた(水滴が落ちない程度に絞った)タオルやシーツを使用して火を消す方法があります。
(水が垂れると、その水が高温の油と接触して危険な油の飛び散りを引き起こすため、水滴が落ちないようしっかりと絞る必要があります)
消火器を使用する場合と同じく、最初にコンロのスイッチを切って火源を止め、その後に湿らせたタオルやシーツを調理器具の上に被せます。
火は酸素があってこそ燃え続けるため、タオルやシーツを使って油が酸素と接触するのを防ぐことで、火を消すことができます。
この方法でタオルやシーツを被せる際は、調理器具を完全に覆い尽くすサイズのものを使用することが重要です。調理器具を完全に覆えない場合、隙間から酸素が供給され、油が燃え続けるリスクがあります。
消火後も油の温度が安全な水準に達するまでは注意が必要です。タオルを取り除く際は、空気が触れて再燃のリスクがありますので、油が完全に冷却されるまで監視を続けることが推奨されます。
※しかし、結論としてはタオルなどは使わず消火器や消火スプレーを常備し、その使用方法もよく知っておくべきです。
3.総括
ここまでの説明を総合すると以下のポイントが挙げられます:
・高温の油に水を加えると、水が瞬時に加熱されて水蒸気に変わり、その膨張により周囲の油が飛び散る原因となります。
・発火している油に水を加えると、油が水蒸気の力で空中に飛び散り、空中の油が新たに酸素と接触して燃焼が激化するため、火勢が強まります。
・油火事においては、消火器や消火スプレーで直接消火するか、またはそれが利用できない場合には水分を含んだしっかり絞ったタオルやシーツで調理器具を覆い消火します。
結論としてはタオルなどは使わず消火器や消火スプレーを常備し、その使用方法もよく知っておくべき。