砂漠の夜が冷える科学的な理由
砂漠の夜が冷える主な理由は、日中に砂に蓄積された熱が夜になると宇宙空間に向けて赤外線として放出されるためです。砂漠地帯では湿度が低く、雲も少ないため、この放射された熱が遮るものがほとんどなく、その結果、地表の温度が急速に下降します。
日中の砂漠はしばしば30℃を超える温暖な気候であるにも関わらず、夜には氷点下にまで温度が下がることも珍しくありません。
これは「放射冷却」という現象によるものです。
次に、砂漠の夜が冷えるメカニズムを詳細に解説していきます。
・ 1.1 物体はそれ自体の温度に応じたエネルギーレベルの電磁波を放出しています。
・ 1.2 日光が砂に当たると、熱が蓄積され砂の温度が上昇します。
・ 1.3 夜になると、砂に蓄えられた熱が赤外線として放出され、砂の温度が下がります。
・ 1.4 空気が乾燥しており、雲が形成されにくい環境では、放出された赤外線が遮られることが少なく、温度が下がりやすいです。
・ 1.5 地面の温度が下がると、その接触している空気の温度も下がります。
1.1 物体は温度に応じた電磁波を放出する
物体は自身の温度に見合ったエネルギーレベルの電磁波を放出し、それによって温度が下がっていきます。たとえば、人間の体温(約36~37℃)からは主に赤外線が放出されています。
太陽は表面温度が約6000℃で、赤外線や可視光線、紫外線を放出します。
この原理により、砂漠では夜間に温度が大きく下がる現象が生じます。また、熱い飲み物が時間とともに冷えるのも、放出される赤外線と熱伝導によって周囲の空気が熱を奪うためです。
1.2 太陽の照射による砂の温度上昇
太陽が照射すると、砂はその光(特に赤外線)を吸収し、その結果熱が蓄積され、砂の温度が上昇します。太陽光は赤外線、可視光線、紫外線など複数の電磁波で構成されており、その中でも赤外線は特に砂に吸収されやすく、砂の温度を効果的に上げます。
赤外線は空気中の主要成分である窒素や酸素にはほとんど吸収されず、そのため砂だけが顕著に暖まるのです。
1.3 日没後の砂からの熱の放射
日が沈むと、昼間に蓄積された砂の熱が赤外線形式で宇宙に向けて放射されます。
これにより、砂の温度は下降し始めます。昼間は太陽からの熱が砂に蓄積されるため温度が上がり続けますが、夜間はその逆で、砂が自身の熱を赤外線として放出することで徐々に冷えていきます。
1.4 乾燥した空気と雲の少なさによる温度の急速な低下
砂漠の空気は非常に乾燥しており、雲が形成されにくいため、砂から放射される赤外線が遮られることが少なく、熱が宇宙空間に逃げやすくなります。これが砂の温度が急速に下がる一因です。
空気中の水蒸気や二酸化炭素のような赤外線を吸収する成分が少ないため、放射された熱が捕捉されることなく宇宙に散逸します。
また、雲がある場合、砂から放射された赤外線が雲に吸収されやすく、それが熱の逃げ道を阻むため、雲がない場合に比べて夜間の気温の低下が遅くなります。このように、砂漠の環境は昼夜の温度差が大きくなる要因となっています。
1.5 砂の冷却が周囲の空気の温度を下げる
砂が冷えると、その周囲にある空気の温度も低下します。これは砂の表面温度が下がると、直接接触している空気が砂から冷やされるためです。
砂の温度が空気の温度よりも低くなると、熱の移動は常に高温から低温へと進むため、空気はその熱を砂に伝え、自らは冷却されます。
この冷えた空気はさらに周囲の暖かい空気から熱を奪い、次第に広がっていくことで地表近くの気温が全体的に下がります。
この過程は、砂が夜間に自らの熱を宇宙空間に向けて放射し続けることで加速されます。放射された熱は空気にほとんど吸収されずに逃げていくため、砂の温度はさらに下降し、これが繰り返されることで砂漠の夜が冷え込む主な原因となります。
これにより、「砂漠の夜が寒い理由」が明らかになります。