はじめに:私が高級腕時計を“ただの時計”だと思っていた頃の話
正直なところ、以前の私は腕時計にそれほどの価値を感じていなかった。時間を見るだけならスマホで十分だし、腕に何かを巻くのも面倒に思っていた。
でも、ある日友人がしていた一本の機械式時計に目を奪われた。ラグが太陽の光で美しく輝いていて、秒針が滑らかに流れるその動きが、何とも言えない品格を放っていた。
そこから私の時計への見方が変わった。単なるアクセサリーじゃない。高級腕時計とは、時間を刻む“文化”であり、“市場”そのものだった。調べてみると、日本国内だけでもこの市場が静かに、けれど確実に拡大していることを知って衝撃を受けた。
高級 腕時計 市場 規模 日本|数字では見えない“背景”を読み解く
まず前提として、日本の高級腕時計市場は長らく安定した需要を持っている。背景にあるのは、富裕層のライフスタイルと“実物資産”への信頼、そして何より“所有する喜び”だ。
国内では年齢層も広く、20代の若手ビジネスパーソンから、リタイア後の趣味として収集するシニア層まで、ユーザー層は多岐にわたっている。
ただ、数値だけではわからない“空気感”がある。私が実際に都内の某高級時計店に通い出して感じたのは、商品ではなく「時間と空間」を買っている人が多いということだった。
静かな接客スペースで、1時間以上をかけて一本を選ぶ。そのプロセスが、もう一つの価値なんだとわかった。
日本国内で人気のブランドは?実店舗とオンラインの違い
私が最初に手にしたのは、オメガのスピードマスター。理由は単純で、「月に行った時計」というコピーに心を動かされたから。もちろん見た目もかっこよかったが、それ以上に“物語”を持っているところに惹かれた。
日本で人気の高級ブランドといえば、ロレックス、オメガ、グランドセイコー、パテックフィリップなどが挙がる。ただ、実際に販売店で聞いてみると、最近はチューダーやノルケインといった“第2ライン”の人気も急上昇しているとのこと。
価格帯が比較的抑えられていて、でもしっかりとした機械式。そのバランスが若年層に受けているようだ。
オンラインショップの普及も市場拡大に一役買っている。かつては「試着しないと買えない」とされていた時計も、今では動画・AR試着などの技術が進化し、自宅でもかなり精密に検討できる。
私も2本目のグランドセイコーはオンラインで購入した。届いたときの満足感は想像以上だった。
高級腕時計は“価値ある選択”か?それとも“自己表現”か?
これは人によって意見が分かれる部分だが、私の場合は完全に“自己表現”として選んでいる。もちろん資産価値もゼロではないが、私にとっては「どんな時間を、どんな時計と一緒に過ごすか」が重要だ。
とはいえ、実際にリセール価格が高いモデルが存在するのも事実。ロレックスの一部モデルなどは、店舗では常に品薄で、プレミアがついている。こうした事情が、“資産としての時計”という見方を助長しているのも確かだ。
ただ、私はこの風潮をすこし冷静に見ている。過度な価格高騰は、時計本来の魅力を曇らせてしまう可能性があるからだ。時計はやっぱり、手元で“時を感じる”ための道具であってほしい。
私の“時計遍歴”とそこから見えた日本市場のリアル
私は30代に入ってから、年に1本ずつ“相棒”を増やしてきた。最初のスピードマスター、次にグランドセイコー、そして最近はノモスのクラブキャンパスを手に入れた。ドイツ製でシンプルなのに、どこか芯のあるデザインが気に入っている。
こうして振り返ると、高級腕時計の市場って「見た目の華やかさ」以上に、“内面への共鳴”で回っていることがわかる。何を身につけるかではなく、“なぜその時計を選んだか”という物語が、購入者の間にある。
そして、この感覚は間違いなく日本市場に特有のものだと思う。控えめで、でも細部にこだわる。目立つよりも“通”でありたい。そういう感性が、実は市場の広がりを支えている。
世界市場と比較して見える、日本の高級腕時計市場の“独自性”
私がヨーロッパを旅したとき、スイス・チューリッヒの時計ブティックに足を運んだ。さすが本場だけあって、接客スタイルも堂々としていたし、「買わないなら出ていけ」みたいな雰囲気さえ漂ってた。
だけど、日本はまったく違う。お茶まで出てきて、一本一本ていねいに説明してくれる。
日本市場の最大の特徴は、“体験と接客を重んじる文化”だと思う。購入者もただの消費者じゃなく、愛好家や“目利き”として扱われることを望んでいる。
つまり、日本は単なる「モノ売り」の市場じゃなく、「関係性で動く市場」なんだ。
たとえば、常連になれば非公開モデルの入荷情報が入ってくるとか、個別にLINEで連絡がくるなんて話もよく聞く。そういう“人との信頼”が積み重なっていく感覚は、海外にはあまりない。
なぜ若年層にも“高級腕時計”が浸透しているのか
昔の私にとって、高級腕時計って中年サラリーマンのステータスだと思ってた。でも今は20代でも平気で高級時計を買う時代。しかも、見栄とかじゃなく“こだわり”として買ってるのが印象的だった。
私の知り合いに27歳の美容師がいる。彼はグランドセイコーの自動巻きを買ったんだけど、「仕事中も時計が気持ちを引き締めてくれる」って言ってた。時計に何かしら“役割”を感じている人が増えてる。
あと、SNSの影響も大きい。YouTubeやInstagramで“時計レビュー系”のアカウントをフォローする若者が増えてるし、時計のある生活を“日常の一部”として発信してる。そうやって自然に憧れが形成されてるのかもしれない。
セレクトショップ・百貨店・オンラインの“リアルな使い分け方”
私が1本目を買うときに一番迷ったのが、「どこで買うか」だった。時計って買う場所によって得られる情報も体験も違う。
実際に私が感じたメリットをざっくり分けると、こうなる。
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百貨店:信頼重視。正規保証が付くし、定番モデルが揃ってる。接客も丁寧。
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セレクトショップ:個性的なラインナップ。人とは違う時計を探すならここ。
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オンライン:中古も含めて圧倒的な在庫。価格比較ができる。買い慣れた人向け。
私は3本目の時計を中古で買ったけど、ちゃんとした鑑定がされていて、状態も極上だった。中古市場が活発なことも、日本の市場規模を支えてる一因だと思う。
新品しか買わないって人もいるけど、中古の魅力は“出会い”の部分にある。もう手に入らない限定モデルや廃盤品は、中古じゃないと見つからない。
時計好きのコミュニティと“市場感覚”の変化
時計を買い始めてから、自然と時計好きが集まるSNSグループやオフ会に顔を出すようになった。面白いのは、みんなブランドや価格で張り合うんじゃなくて、“時計に対する思い入れ”を語ってるところ。
私も何度か自分の時計について話す機会があったけど、デザインの由来とか、なぜそのモデルを選んだのかっていう背景を語ると、すごく共感されるんだ。
時計っていう“機械”を通して、人とのつながりが生まれる。その広がりが、この世界に深みをもたらしてると思う。
そして最近気づいたんだけど、“買うこと”よりも“語ること”のほうが、購入後の満足度を押し上げてる。
だからブランド側も、単に製品を出すだけじゃなく、ストーリーのあるプロモーションに力を入れてる。イベント、展示、ブランドヒストリーの紹介…。市場は“体験型”へ確実に変わってきてる。
まとめ|日本の高級腕時計市場は“共感”で動く時代へ
ここまで私の実体験や市場での観察を交えて書いてきたけど、日本の高級腕時計市場って思った以上に“人間味”に溢れてる。
単なるブランド消費でも、ただのモノとして扱われる存在でもない。
手首に巻いた瞬間から、その人の時間が時計とともに進んでいく。そんな感覚が、日本市場の“共感性”を生み出している。
そしてこの共感が、さまざまな世代・体験型ショップ・SNS拡散・オフラインイベント…すべてをつないで、静かに、でも力強く市場を動かしてる。
高級腕時計を買うって、確かに覚悟がいる。でもそれ以上に、得られるものも多い。それは“時間そのもの”じゃなく、“時間をどう生きるか”の感性なんだ。