私が初めてエルメスのブティックに足を踏み入れた日、それはまるで時間が止まったかのような感覚だった。
明るい照明が照らし出すディスプレイの中に、まるで宝石のように鎮座するバッグたち。その中心にあったのが、エルメスの象徴とも言えるバーキンだった。
バーキンと言えば、その希少性と存在感から“究極のバッグ”と呼ばれている。だが、今回はその中でも最新作のレビューを求められ、私の心は高鳴っていた。
「こちらが今季の新作、バーキンの最新モデルです。」
店員の手によって差し出されたのは、鮮やかなクレマンスレザーのバーキン。光を浴びて上品に輝くその質感は、見ているだけで指先が疼く。
「サイズは?」
「今季の注目は30と35です。しかし、根強い人気の25も引き続きオーダー可能です。」
店員の言葉に、私は思わず目を奪われた。25、30、35──この3サイズがエルメスファンの間で熾烈な争奪戦の的となっているのは周知の事実だ。
25サイズ – 可憐さとコンパクトさの魅力
まずは25サイズ。小柄な体型の私には一番バランスが取りやすいサイズ感だ。手に取ると、まるで子猫のように愛らしい。だが、その小ささゆえに収納力はやや犠牲になる。財布、スマホ、リップ、そしてカードケースを入れたらもうギリギリ。
「これはデートやディナー向けですね。」
30サイズ – 実用性と洗練のバランス
そう呟きながら、私は次に30サイズを手に取る。25と比べると、少しだけ大きくなり実用性が増す。しかし、エルメスの魔法と言うべきか、このサイズでも決して存在感が失われることはない。
「このサイズなら、手帳やメイクポーチも余裕で入る。」
試しに30サイズの内側を覗き込み、その収容力に感心する。もちろん、素材はクレマンスレザー。しっとりとした肌触りと耐久性のバランスが絶妙だ。
35サイズ – 圧倒的な存在感と貫禄
そして、最後は35サイズ。堂々たる迫力に圧倒される。25や30の愛らしさとは一線を画す貫禄が漂っている。
「これはまさにステータスバッグ。」
私の頭の中には、これを持って颯爽と歩く自分の姿が一瞬浮かんだ。だが、正直なところ、その重厚感に日常使いとしては少々ハードルが高い。
「さあ、どれを選ぶ?」
心の中で自問自答する。25の可憐さ、30の実用性、35の圧倒的存在感。まるで運命の分かれ道に立たされているかのようだ。
「では、実際に持って鏡で合わせてみましょう。」
店員の一言で、私は現実に引き戻された。目の前には、3つのバーキンが並んでいる。果たして私が選ぶのは──。
決断の時 – 私の選んだサイズは?
店員の前には3つのバーキンが整然と並んでいる。25、30、35。それぞれが異なる魅力を放っているが、私の心はまだ決まらない。ふと、店員がにっこりと笑って言った。
「こちらの35サイズは、今なら即納可能ですよ。」
即納。魔法の言葉だ。エルメスのバーキンは基本的に入手困難で、特に人気のカラーや素材は長い待ち時間が伴う。それが即納と聞いた瞬間、私の心は揺れ動いた。
だが、35サイズの迫力はやはり相当なもの。持ってみると、その重さもかなりのものだ。これを毎日持ち歩く自分の姿を想像してみる。
「いや、これは…私が持つと完全にバッグに持たれてるな。」
友人のミカが後ろでクスクス笑っている。「バッグに持たれてどうするのよ?バッグが君を持って歩いてるみたいだよ。」
そう言われると、確かにそんな気がしてくる。もう一度鏡を見つめ、自分の全身を確認する。
30サイズ – ゴールドカラーの誘惑
「こちらの30サイズは今季の新色、ゴールドカラーです。」
店員が差し出した30サイズのバーキンは、まさに黄金色の輝きを放っていた。落ち着いたトーンでありながら、存在感は抜群。視線を奪われる。まるで、宝物がそこに鎮座しているような風格。
「これ、もしや私の人生のゴール地点なのでは?」
ミカがすかさず突っ込んでくる。「いやいや、まだゴールしちゃダメでしょ。貯金がゼロになるって意味でのゴールでしょ?」
私は思わず苦笑い。確かに、その通りかもしれない。
25サイズ – デートにもぴったりの可憐な存在
一方、25サイズのバーキンは、小ぶりで愛らしい。まるで子猫のように手のひらに収まるそのサイズ感。軽さも申し分ない。デートやちょっとしたお出かけには最適だ。
「これなら、肩も疲れないし、クラッチバッグ感覚で持てるかも。」
ミカが目を輝かせて言う。「でも、あんたの荷物全部入るの?いつもあれもこれも入れてパンパンになってるじゃん。」
確かに。私のバッグの中身はいつも溢れている。財布、ポーチ、メイクポーチ、手帳、携帯充電器…。それを考えると、25サイズでは少々厳しいかもしれない。
決断の瞬間 – 私の選択は…?
再び鏡の前に立つ。35サイズの圧倒的な存在感。30サイズの黄金の誘惑。そして25サイズの愛らしさ。
ミカが耳元で囁く。「もう決めた?」
私は深呼吸して目を閉じた。心の中で3つのバーキンが浮かんでは消える。
「ええ、決めた。」
そして、私は店員の方を向き、毅然と言い放った。
「30サイズのゴールドをお願いします。」
店員がにっこりと微笑む。「素晴らしい選択です。」
すると、ミカが後ろで囁く。「いやいや、本当にそれで大丈夫?お前、さっき貯金ゼロになるって言ってたけど?」
私はニヤリと笑って言い放った。「いいの。だって私の人生はゴールドラッシュだから!」
そう言い放った瞬間、ミカは呆れ顔。私は高らかに笑いながら、店員にクレジットカードを差し出した。
これで私のエルメス バーキン物語が始まるのだ。
まとめ
エルメスのバーキン最新作を手に取るまでの葛藤と興奮が描かれた今回の体験談。25サイズの可憐さ、30サイズの実用性、35サイズの圧倒的存在感。どれも魅力的だが、結局選んだのは「30サイズのゴールド」。
貯金ゼロになる覚悟で手にしたそのバッグは、まるで人生のゴール地点のような輝きを放っていた。
「私の人生はゴールドラッシュ」と笑い飛ばしながら、新たなバーキンライフがここから始まる──。