「いつか高級車をビジネスに使ってみたい」
そう思いながらも、日々の仕事に追われ、何年もその夢を放置していた。
だがある日、偶然出会ったレンタカーオーナーの話をきっかけに、私はついに動き出した。
この記事では、私が実際に個人で高級車レンタカーを立ち上げ、試行錯誤を経て軌道に乗せていった過程を語りながら、これから始めたい人のために実務的なヒントや考え方を紹介していく。
高級車レンタカー市場と個人参入の現状
高級車レンタル需要の拡大背景
もともと私は「高級車」とは無縁の人生を歩んでいた。
公共交通を使えば充分だったし、自家用車を持ったこともない。維持費がかかると聞いていたし、乗る機会もなかったからだ。
しかし、ある時ふとしたことから「特別な日にだけ高級車を借りる」というサービスがあることを知った。
たとえば、プロポーズや結婚式、特別なドライブデート、インバウンド旅行客のVIP送迎など、普段は縁のない車に“体験として”乗れるというニーズがあるらしい。
調べていくうちに、全国的にもこの「一日だけのラグジュアリー体験」市場が徐々に伸びていることがわかった。
驚いたのは、地方都市でも“隠れた需要”があったこと。大都市圏に比べれば数は少ないものの、近くにないからこそ選ばれるケースもあると知り、地方在住の私にとって大きな希望になった。
法人と個人運営の違いと強み
私はもともと、会社員とフリーランスの“二足のわらじ”で生活していた。
「副業OK」とはいえ、リスクはなるべく避けたかった。だから最初は、自分一人でも始められる範囲の“個人運営”スタイルを模索した。
一般的には、レンタカー事業というと法人のイメージが強いが、実は法律上、個人でも運営可能な制度が整っている。
もちろん届け出や設備要件はあるが、ひとつずつ丁寧に対応すれば十分に対応できる範囲だ。
実際にやってみて感じた個人事業の強みは、「意思決定の速さ」と「お客様との距離の近さ」。
問い合わせの返信や予約対応をすべて自分で行うからこそ、サービスの質を保ちやすい。お客様の声がダイレクトに届くぶん、改善点も見えやすい。
そして何より、スモールスタートが可能な点も魅力だった。
個人で高級車レンタルを始めるための準備
資格・届出・登録に関する基礎知識
これはよく聞かれる質問だが、「車を持っていればレンタルビジネスができる」というわけではない。
日本では、レンタカー事業には法的な要件が定められており、運輸支局への届出や、所定の営業所・車庫・保険の要件を満たす必要がある。
私の場合、最寄りの運輸支局に直接相談し、どのような書類を出す必要があるのか、必要な設備は何かを一つずつ確認して進めていった。
特に重要なのは以下の3つ:
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営業所と車庫の確保(地図・平面図・現地写真が求められる)
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車両ごとの登録・ナンバープレート変更(一般のナンバーとは異なる)
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対人・対物無制限のレンタカー用保険加入
これらをすべて満たして初めて、正式に「有償貸渡業」として認められる。
一見難しそうだが、事前に手続き内容については地域やケースにより異なるため、事前に運輸支局などへ確認することをおすすめしたい
初期準備の考え方と資金イメージ
高級車レンタカーと聞くと、「大金が必要そう」と思われるかもしれない。
私もそうだった。だが実際には、いきなり何台も揃えたり、立派な店舗を構える必要はない。
大切なのは、自分が扱いたい車種の目的とターゲットを明確にすること。
結婚式や記念日の利用を想定するのか、観光やビジネスユースなのか。それによって必要な車種や準備も変わる。
私が意識したのは、「維持しやすく、かつ“特別感”を演出できる1台」を選ぶこと。
そして、サイトやSNSなどでの告知に必要な最低限の準備を整えた。
費用面については、「開業資金」というより生活費に影響しない範囲で慎重に調整した。
リスクを最小限にするために、自己資金内で収まるように調整したこともあり、無理なく始められた。
ここでは具体的な金額には触れないが、補助金制度や中古車の活用など工夫次第で初期負担を軽減できる点も知っておいて損はない。
レンタル向きの高級車とは?車種選びのポイント
利益率と維持のしやすさで選ぶ
「どの車種が良いのか」は、最も多く聞かれる質問の一つだ。
私自身も何度も悩んだが、今では次のような観点で判断している。
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デザイン・ブランド力があり“写真映え”する
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一定の信頼性と整備性があり、故障リスクが低い
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維持費や保険料が無理なく管理できる
高級車であることが条件だが、見た目の派手さだけで選ぶと維持が大変になることも多い。
私が選んだ車は、ビジネスユースにも対応でき、かつ特別感のある上品なブランドだった。
また、定期点検や消耗品の交換コストも、事前にある程度把握しておくことが重要だ。
集客に強いレンタカー事業の立ち上げ方
さて、車と許可が整えば次に必要なのは「お客様に見つけてもらう仕組み」だ。
実はここが、私が一番苦労した部分だった。
最初はレンタカー登録サイトに車両情報を載せただけで、「あとは待っていれば予約が来るだろう」と思っていた。
が、そんなに甘くはない。
“情報を届ける努力”なしに予約は入らない。
これは痛いほど実感した。
私がまず手をつけたのは、Googleビジネスプロフィールの登録だ。
地名や「高級車 レンタカー」などの検索結果に表示されるようになったことで、問い合わせがポツポツと入り始めた。
無料でできる施策のなかでは、私のケースでは、ある程度反応が見られるようになった
次に始めたのがInstagramとLINE公式アカウントの運用。
Instagramでは、車の外観・内装を美しく見せる写真を中心に、利用シーンや簡単な体験談を投稿。
ストーリーズではキャンペーン情報や当日の空き状況をシェアし、DMで予約につなげた。
意外にも多かったのが、「知人に見せたくてリポストしました!」という反応。
車そのものが“バズる要素”になることを、この時知った。
LINEは、予約確定後のやり取りや事前確認に使ったが、これも信頼感につながったようだ。
SNSは私の体験では、最初は手間でも、継続することで効果的な集客につながったと感じている。
顧客対応とリピートにつながるサービス設計
「高級車レンタカーは“体験サービス”である」
これが、運営を始めて半年ほど経った頃、私が強く意識するようになったことだ。
車を貸すだけなら誰でもできる。
けれど、「またこの人から借りたい」と思ってもらうには、体験全体の質を整える必要がある。
具体的には、こんな工夫をした:
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受け渡し時に、車両の操作ポイントを丁寧に説明
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天候に応じて、タオル・簡易傘・ドリンクなどの“気遣いアイテム”を同乗
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フォトスポットMAPやおすすめドライブコースを自作してプレゼント
これらは全て、「自分が借りる側だったら嬉しいこと」を逆算して実行したものだ。
さらに、リピートや紹介につながったのが「利用後のお礼メッセージ」だった。
LINEで簡単な挨拶と写真の共有をお願いすると、「思い出が形になってうれしい」と返信をくれる方も多かった。
高級車を“商品”とせず、“物語のパートナー”として提供する。
これが、私なりのブランディングになった。
リスク管理とトラブル対策
もちろん、良いことばかりではない。
ある日、車を返却に来たお客様が「ちょっと擦ったみたいです…」と申し訳なさそうに告げてきた。
が、小さなトラブルが起きた際にも、冷静な対応を心がけた。
このとき大事だったのは、感情的にならないことと冷静に契約内容を伝えることだった。
私は事前に利用案内としてご説明していたこともあり、落ち着いて対応することができた
この経験から、私は以下の点を徹底するようになった:
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利用前に注意点を紙と口頭で説明
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写真による車両状態の記録(貸出前・返却後)
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自身で想定シナリオをまとめ、過去の対応を振り返るようにしている
保険についても、自分の運用スタイルに応じて内容を確認・調整するように心がけた。
「何かあったときにどう動けるか」は、信頼にも直結する部分。
これが整ってからは、逆に「丁寧にやってくれそうだから安心」という理由で選ばれることも増えた。
高級車レンタカー事業の成功者インタビュー(自分自身)
ここで少し、私自身の“現在地”を話しておこう。
運営を始めてから今まで、たくさんの壁にぶつかってきた。
最初の1ヶ月は予約がゼロ、広告費をかけても反応がない、雨の日はキャンセルが相次ぐ…。
それでも、「このビジネスには未来がある」と思えた理由は、お客様の声だった。
「一生に一度のプロポーズで使わせてもらいました」
「父の還暦祝いで乗ったベンツ、ずっと忘れません」
そんな言葉をもらうたびに、「単なる貸し出し業ではなく、思い出を支える仕事なんだ」と実感した。
私はまだ“成功者”とは呼べないかもしれないが、自分の手で生み出したサービスで誰かの人生に寄り添えているという実感は、何にも代えがたい。
長く安定して運営するための経営戦略
ここまで続けてきて、いま私が感じているのは、「続けるには戦略が必要だ」ということ。
たとえば、繁忙期と閑散期の差。
最初の年は、冬にまったく稼働がない時期があり、焦った経験もある。
今では、季節に応じたキャンペーンや、複数の利用シーン(撮影用、送迎用、出張用など)を想定したプラン設計を行うようにしている。
また、将来的には複数車両の運用や外注化、法人との連携なども視野に入れている。
だがそれも、今の“1台で丁寧に回す力”をしっかり磨いた上でこそだ。
そして最も大切にしているのは、「顧客との信頼関係」。
AIや自動化が進んでも、最後は人と人。
心を込めたサービスと真摯な対応が、長く続くビジネスの土台になると私は信じている。
まとめ:個人だからこそ、できる高級車レンタカー運営
振り返れば、何の後ろ盾もない“ただの個人”だった私が、ここまで続けてこられたのは
「やってみる」ことを選び続けたからだと思う。
もちろん、苦労はあった。けれど、その分「こんな形でも人の役に立てるんだ」という気づきもたくさんあった。
もし、あなたが今この記事を読んで「やってみたい」と少しでも思っているなら、
それはもう、最初の一歩を踏み出しかけている証拠だ。
“特別な車で、特別な体験を届ける”
そんなビジネスを、自分の手で育てていくことは、本当にやりがいのある旅だ。